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2012年1月10日

「モバツイ」の本

えふしん(@fshin2000)さんと言えば、モバツイの開発者でもあり、マインドスコープ(株)の社長でもありますが、分かりやすい文章でさまざまな切り口からネットや人について考察するブロガーでもあります。

F's Garage @fshin2000

そんなえふしんさんが本を書きました。

100万人から教わったウェブサービスの極意 ~「モバツイ」開発1268日の知恵と視点
藤川 真一
技術評論社 (2012-01-04)
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「モバツイ」について開発者自身が書いた本ということで、非常に興味を持ちました。
ありがたいことに、献本いただきましたので、年末から年始にかけて、楽しみながら読ませていただきました。

「モバツイ」と拙作の「Twit」は一日違いで公開されています。
2007年4月7日に「Twit」が公開され、その翌日の8日に「モバツイ」が公開されています。
Twitterが日本で使われ始める黎明期に開発されたクライアントソフトで、僕とえふしんさんはその混沌期を戦った戦友のようなものでもあります。
このころのTwitterは不具合も多かったですし、日本語だと投稿できない、遅延が頻繁に起きる、サーバを直すのに猫の手を借りている(懐かしい......)など、いろいろなトラブルが頻繁に発生しました。
サーバ側の問題もユーザにとっては、「Twitのバグ」「モバツイのバグ」と認識されてしまうし、その対応はほんとうに大変でした。
それでも、対応をし続けてきたのは、Twitterのタイムラインを使ったユーザとのコミュニケーションによる開発の楽しさだったのかもしれません。
それまでは、フリーウェアを開発しても、ここまでユーザと密にやり取りすることはなかったし、ユーザの声を生のまま受け取ることもありませんでした。
あのころ、僕らはタイムラインドリブン(それと、ちやほやドリブン)で開発を続けていたのです。

この本には、その頃のわくわくするような開発の日々のことも書いてありました
しかし、技術書ではありません。あくまでも、読み物として、サービスを提供し続けようとする「人」であるえふしんさんの姿が描かれています。
えふしんさんの、なぜTwitterはメジャーになったのかの分析、ケータイとスマートフォンに関する考察は、いつものブログの文章のように分かりやすいです。
でも、本書で一番おもしろいのは、一人のTwitter好きの開発者がいかにしてモバツイを作り上げ、サービスとして維持し続けていこうとしたかの「想い」にあります。
これからWEBサービスやソフトウェアを作ってみようと思っている人も、すでに作っている人にも、この「想い」は共感できると思いますし、気づきもあると思います。
そして、WEBサービスを使ったりソフトウェアを使っている人にとっては、その0と1のかたまりの向こうに想いを持った人がいて、その人がデジタルでもクールでもない、がむしゃらな気持ちでそれらを作りだしたのだということが感じられるのではないかと思います。

とにかく、文章の読みやすさは保証付きのえふしんさんの本です。
ぜひ、読んでみてください。
なにかを作ろうと思っている人に勇気と元気を与えてくれる本だと思います。

#個人的には、ついコンの話が出てきてむちゃくちゃうれしかったです。もう、今ではおそらく実現不可能であろうこの企画ですが、この企画にはあの頃のTwitterの楽しさが詰まっている気がするので。

投稿者 CHEEBOW : 2012年1月10日 12:00 このエントリーを含むはてなブックマーク

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